セレモニーピアニストの日々

片山健太郎

セレモニーピアニストのこと 献奏曲のこと

【アーティスト別】献奏でご要望の高い曲 (1) 美空ひばり

投稿日:2019年5月23日

前回の記事はこちら。

本来ですと、献奏でご要望の高い曲の60代・70代前半編を取り上げるタイミングですが、ここからはしばらく、アーティスト毎のご要望の高い曲を取り上げてみたいと思います。

献奏へのリクエストで、ご遺族様よりアーティスト(グループも含む)の名前だけを頂戴し、その中での選曲を私どもに一任下さるケースが度々ございます。故人様が、そのアーティストの大ファンだったというケースがほとんどですが、その場合は、代表曲をいくつか取り上げて演奏を致します。

今回は、トップバッターとして、最も演奏頻度の高い昭和の歌姫「美空ひばり」を取り上げたいと思います。なお、今回の記事は、以前の記事と重複事項が多いですが、ご承知おきください。

美空ひばりへのリクエストは、本当にたくさん頂戴します。彼女の歌が日本国民にとってどれほど愛されたかを、セレモニーの世界からも垣間見ることが出来ます。以前のブログ記事でも少し書いたのですが、美空ひばりへのリクエストは、単に故人様がファンだった、と言う理由だけでなく、ご遺族様から「献奏にふさわしい」という理由でチョイスされたり、またご遺族様方から具体的なリクエストが挙がらない際に、葬儀会館の担当者より「では美空ひばりなどいかがでしょうか?」と言う具合にご提案致したりする事もあり、そのような事情からセレモニーで演奏されるアーティストでもダントツの多さを誇っております。

なぜこのような事になるか、私なりに思うに、彼女の歌が「人生」と言うテーマに深く根ざしたものが多い事、彼女の生き様が、同時代を生きた者の共感を誘う事などでしょうか。かく言う私も、この仕事に携わるようになる前に美空ひばりの歌に触れる事は少なかったのですが、今では、非常にフェイバリットなアーティストの一人になりました。

では、美空ひばりの歌の中から、献奏の場面で使われることの多い曲を挙げて参りましょう。

※文中の敬称は略させて頂きます。

「川の流れのように」

既にブログ上で紹介致した曲なので詳しい説明は省きます。人生を総括する歌として、この歌の右に出るものは今後も現れないのではないか?と思わせる、そんな楽曲です。
(1989年/平成元年/秋元康:詞/見岳章:曲)

「愛燦燦」

家族愛をテーマにしたこの曲も、やはり献奏にふさわしい楽曲のひとつです。リクエストの頻度ももちろん高いのですが、私自身は美空ひばりを希望されない喪家様の献奏の際にも取り上げる事が多いです。その理由として、良い意味で「川の流れのように」よりひばり色が薄い事、曲自体の柔和な印象、そして演歌調でない事が挙げられます。
(1986年/昭和61年/小椋佳:詞・曲)

「悲しい酒」

打って変わって、演歌の代表的な楽曲。ピアノに限らず、バイオリンやフルート、チェロの独奏などでも映えるかと思います。作曲家古賀政男による傑作中の傑作。美空ひばりに楽曲提供をするとなると、やはり力の入り方が違うんだなあ、などと思っていたら、実は、この曲は元々美空ひばりのために作った曲ではないと言う事を後から知りました。もうお嬢の曲って事で良いですよ・・・ね。
(1966年/昭和41年/石本美由起:詞/古賀政男:曲)

「みだれ髪」

悲しい酒が古賀政男の傑作とすれば、こちらは作曲家船村徹の、やはり傑作のひとつかと思います。ひばりの持ち味である低めのトーンで哀愁を表現しつつも、クライマックスで一気に高域へ駆け上がるダイナミックさが気持ち良いですね。この曲自体へのリクエストが少ないため、お別れの献花や出棺の場面で演奏する事は頻繁ではありませんが、私自身のセレモニー演奏の中では、比較的良く取り上げています。
(1987年/昭和62年/星野哲郎:詞/船村徹:曲)

「リンゴ追分」

最後に個人的に好きな楽曲をひとつ。もちろん人気のある曲ですので、リクエストを頂戴することもありますが、「みだれ髪」と共に、リクエストが無くても取り上げたくなる、そんな曲です。杓子定規な演奏だと、たちまち曲の雰囲気が台無しになるので、奏者への要求レベルが高い楽曲とも言えます。上手く演奏されれば、フルートやバイオリンのソロ演奏でも大変効果的です。
(1952年/昭和27年/小沢不二夫:詞/米山正夫:曲)

セレモニーという厳粛な場を皆さん意識しておられるのか、美空ひばりにおいては明るく華やかな曲調は避けられる印象が強いです。「港町十三番地」「柔」「真赤な太陽」など、全くリクエストが無い訳ではありませんが、ごくごく少ないものですし、「人生一路」などは、もっとリクエストがあっても良さそうですが、やはり「川の流れのように」の王者感が抜きん出ているんでしょうね。よほどのひねくれ者でも無い限り、セレモニーで美空ひばりをチョイスするのであれば、「川の流れのように」を外す事はありません。私はかなりのひねくれ者だと自負しておりますが、美空ひばりのリクエストを頂戴したら「川の流れのように」と「愛燦燦」は必ず演奏します。

最後に、私がもし、美空ひばりの楽曲だけでセレモニー演奏を構成するとしたら、と言うテーマで選曲してみます。実際は法的な問題もあって、このような形で演奏できる機会はごくごく限られますが、あくまでもシミュレーションという事でご理解下さい。

<開式前>
・リンゴ追分
・津軽のふるさと
・みだれ髪

<ナレーションBGM>
・愛燦燦

<閉式後、お別れ献花>
・悲しい酒
・川の流れのように

<出棺>
・柔

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