ここのところYou Tubeの話題が続きます。
本チャンネルでは3本目の動画になりますが、3本目にして、ようやくセレモニー演奏の話をテーマにしています。
曲は、ショパンの有名な「別れの曲」
この曲は、元々しっとりした曲なので、そのままの形でセレモニーの中で演奏しても差し支えないのですが、ここでは私自身がセレモニーの雰囲気に合わせてアレンジしたものを披露しております。
なぜアレンジするか?
その理由は動画をご覧頂くとして、ブログでは、この「別れの曲」を違った角度から眺めてみたいと思います。
「別れの曲」とはショパンが自らのピアノ表現の深化のために作り出した12曲からなる練習曲(作品10)、その「第3番」の曲中の一部分につけられた愛称です。全12曲とも、高度な指のテクニックと持久力が要求される難曲揃いで、この第3番も例外ではありません。第3番全曲を通しで聴いていくと、有名な「別れの曲」の旋律の後に、超絶技巧な中間部が続き、ああやはり「練習曲なんだ」と納得させられるでしょう。
それだけではありません。実は、この有名な「別れの曲」の旋律も、ショパンの当初のプランでは、今私たちが慣れ親しんだゆっくりとしたテンポではなく、超絶技巧を要求される「ゲキ速」なテンポを想定していたフシがあります。それは、彼の自筆譜の中で、当初この曲のテンポが「Vivace(ビバーチェ)」(快速に、という意味)と指定された事でも明らかです。その後、紆余曲折があり、楽譜が出版されることには「Lento ma non troppo(レント・マ・ノン・トロッポ)」(遅く、ただしあまり極端ではなく)と、真逆の指定がなされました。ショパンの中でどのような心境の変化があったのかは定かではありませんが、現代の演奏では、「別れの曲」の場面はごくゆっくりと、その後の場面でほぼ倍速状態の「ゲキ速」になるパターンが一般化しました。
でも、あくまでも私個人の解釈ですが、「別れの曲」の旋律も、練習曲本来の意味では「ゲキ速」で演奏されるべきだと思っています。詳しく書こうとすると楽譜の引用やらで大変になってしまうのですが、全曲の音価と速度記号の整合性を検証すると、楽譜の冒頭に指定される「Lentoほにゃらら」と言うテンポだけが宙に浮いてしまうのです。 逆にここを「Vivace」と決めてしまうと、第3番の曲全体が見事に一貫性を持ってきます。「別れの曲」を「Lentoほにゃらら」のテンポで演奏してしまうと、その次の「ゲキ速」の部分との断絶感が際立ってしまいます。つまり曲が分裂してしまうのです。
そう思うのは私だけなのかな?いろんな演奏を聞いてみましたが、「別れの曲」の旋律をゲキ速で弾き飛ばす演奏には、今まで巡り会ったことがありません。クラシックの世界では、やれオリジナル楽器だの、やれ初演当時の演奏方法を取り入れるだの、そう言ったトレンドがありますから、誰かそのうちやってくれる事を期待しようと思います。自分でやれよ、って言う話かもしれませんが・・・。
最後に動画を貼っておきます。ぜひともご視聴下さいませ。