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忘れた頃に更新を・・・、年代別献奏曲記事の6回目。いよいよ「団塊世代」を含んだ、60歳代から70歳代前半の方々がお亡くなりの際に、リクエストされることの多い曲を取り上げたいと思います。
実際のところ、この世代の方をお見送りする機会はそれ程は多くなく、データも完全ではありません。考えてみれば至極当然のことで、私の父母もちょうどこの世代ですが、二人ともまだまだ元気です。一方で、地域との関わりよりも、個としての生き方にウェイトを持つ割合が増え、ご葬儀も宗教色に捉われないご自身のやり方を検討されている向きも多いようです。
音楽の方では、多種多様なジャンルを好まれる傾向にあり、なかなか一括りに献奏曲をご紹介する事は難しいのですが、ここでは、演歌と歌謡曲のジャンルに分け、それぞれにリクエストの多い曲を取り上げてみたいと思います。まずは演歌編から。
※文中の敬称は略させて頂きます。
千昌夫「星影のワルツ」
千昌夫へのリクエストは大変多いです。人気があるのは「北国の春」ですが、セレモニーにより良くマッチングするのはこちらではないかと思います。おそらく、私以外のセレモニー演奏者も多く取り上げていらっしゃるんじゃないでしょうか。哀愁を帯びつつ、3拍子と言う事もあって、どこかおしゃれな雰囲気も醸し出しております。私も積極的に取り上げる1曲です。
(1966年/昭和41年/白鳥園枝:詞/遠藤実:曲)
水前寺清子「三百六十五歩のマーチ」
この曲へのリクエストも度々頂戴します。言わずもがな、セレモニーに合わせた演奏をするには一工夫もふた工夫も必要になりますが、内容が人生讃歌であるため、セレモニーでこの曲を流したいと希望される方が多いのもうなずけます。出棺の場面に花を沿える曲であり、お別れ献花の場面でも、アレンジを工夫すれば印象深いシーンになる事でしょう。
(1968年/昭和43年/星野哲郎:詞/米山正夫:曲)
森進一「おふくろさん」
十年ほど前に、その歌詞を巡って騒動が起きた曲としてご記憶の方もおられましょう。曲自体はセレモニーの場面にも非常にふさわしいですし、故人がお母様でいらした場合には、感慨もひとしおでしょう。ですが、先の騒動でケチがついてしまったのか、取り上げる機会が非常に少なく、最近になって少しずつリクエストが増えて来た感があります。楽曲に罪は一切ないのですが、非常にもったいないですね。
(1971年/昭和46年/川内康範:詞/猪俣公章:曲)
森昌子「せんせい」
テレビ番組「スター誕生」出身「花の中三トリオ」の中で最も活動歴の長かった森昌子ですが、今年(2019年)限りで芸能活動を引退なさるそうです。この「せんせい」でデビューしたのが1972年(昭和47年)でした。まだこの頃はアイドル歌手として活動されていて、この曲も演歌ではありませんが、森昌子としてリクエストを頂戴する場合は、この「せんせい」をいの一番に挙げられる方が多いです。
(1972年/昭和47年/阿久悠:詞/遠藤実:曲)
都はるみ「北の宿から」
先に紹介した千昌夫とほぼ同世代、デビュー年も近く、多くのヒット曲を持ち、リクエストも度々頂戴しますが、1曲に絞る事は難しい歌手の一人でもあります。それでも、ヒット曲の中では最も叙情的であると言う意味では、「北の宿から」がセレモニーには一番ふさわしいかな、と思います。メロディーラインも流麗なので、楽器だけの演奏でもよく映えます。
(1975年/昭和50年/阿久悠:詞/小林亜星:曲)
演歌編と言う事でまずは5曲取り上げましたが、「星影のワルツ」を除いて、「ヨナ抜き」と呼ばれる演歌調の曲ではありません。私のセレクトが偏っている事が最も大きな理由ですが、昭和40年代の演歌が、それまでの「演歌調」にこだわらずに、より幅広く音楽性を取り込もうとしていた事の証かもしれません。比べると、平成期に入って以降の演歌の方が、良くも悪くも原点回帰的なアプローチに戻ったと感じます。
演歌編をもう少し続けます。