セレモニーピアニストの日々

片山健太郎

セレモニーピアニストのこと 献奏曲のこと

[年代別]献奏でご要望の高い曲[60代〜70代前半](3) 歌謡曲編

投稿日:2019年9月8日

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今回は歌謡曲編、主に1960年代後半から1970年代、昭和だと40年代から50年代前半にかけて、と言った所でしょうか。

※文中の敬称は略させて頂きます。

ザ・タイガース「花の首飾り」

1960年代の終わり、または昭和40年代の初め頃、日本においてグループ・サウンズ(以下GS)と言うジャンルが一大ブームになった事をご記憶の方も多いかと思います。私が関わったご葬儀で、GSのリクエストを頂戴する機会は大変に少なく、「花の首飾り」と「亜麻色の髪の乙女(ヴィレッジ・シンガーズ)」を数回頂戴するに留まっています。この「花の首飾り」、私が以前お邪魔していた葬儀会館の担当さんで、とてもお好きな方がいらっしゃり、「俺の担当するセレモニーで必ず演奏してくれ。」と念を押されていた事が忘れられません。GSへのリクエストも、今後は少しずつ増えてくるんじゃないでしょうか?例えば、「あの時君は若かった(ザ・スパイダース)」「想い出の渚(ザ・ワイルド・ワンズ)」「ブルー・シャトー(ジャッキー吉川とブルーコメッツ)」など、セレモニーの場面にも合致すると思います。
(1968年/昭和43年/菅原房子、なかにし礼:詞/すぎやまこういち:曲)

青江三奈「伊勢佐木町ブルース」

青江三奈へのリクエストは、この時代の歌手の中では多い方に属します。そして青江三奈と言えば、「伊勢佐木町ブルース」となるのは、ごく自然な事です。もちろん、演奏にもお応えしますが、果たして、お別れ献花(花入れ)でこの曲が会場に流れた時、参列の方はどんな思いで故人をお偲びするのか?ちょっと気になる所ですね。実際は、ボーカルが入らない器楽演奏の場合、例の「ハーン」と言うため息の部分は休符扱いで演奏しませんので、会場の雰囲気が凍りついたりは致しません(笑)。故人が青江三奈の大ファンであれば、「伊勢佐木町ブルース」、迷わずリクエスト頂けたらと存じます。もちろん「恍惚のブルース」や「池袋の夜」など、他の曲も良いと思います。
(1968年/昭和43年/川内康範:詞/鈴木庸一:曲)

加藤登紀子(森繁久彌)「知床旅情」

加藤登紀子の曲は、この「知床旅情」と「百万本のバラ」の演奏機会が最も多いです。「知床旅情」は森繁久彌のカバーと言う事になりますが、加藤の歌唱で大ヒットを記録しました。80歳代以上の方々にも人気のある曲です。3拍子のスケールの大きなメロディーラインで、お別れ献花でも良いですし、出棺で奏されるのはよりふさわしいと感じます。加藤登紀子は、先の2曲もそうですが、いろんなジャンルの名曲を自家薬籠中のものとされるのが得意なんですね。上記の曲の他に「琵琶湖周航の歌」や、映画に使われた「時には昔の話を」もセレモニーの雰囲気にあった楽曲です。
(1965年/昭和40年/森繁久彌:詞/曲)

ちあきなおみ「喝采」

非常に恥ずかしいお話ですが、私はちあきなおみという歌手を献奏の仕事を手がけるまで全く知りませんでした。子供の頃は、歌謡曲系の歌番組を良く見ていましたが、私が歌謡曲に親しんだ1980年代の半ばに、彼女はテレビではあまり見かけませんでしたし、仮に出演していても、子供の私の琴線には触れなかったんだろうと思います。献奏の仕事を通して、彼女の歌唱の素晴らしさを知る事ができ、私の人生の収穫の一つにもなりました。特に「黄昏のビギン」は、カバーではありますが、私はちあきの歌唱が最もお気に入りです。今回はセレモニーに最も合う曲という事で、「喝采」を選びたいと思います。愛する人の死を真正面から捉えた曲で、自分が死んだらこの曲を流して欲しいと思ってらっしゃる方も多いのではないかと思います。
(1972年/昭和47年/吉田旺:詞/中村泰士:曲)

宮史郎とぴんからトリオ「女のみち」

叙情的な「喝采」とは対照的でコミカルな曲をこの項最後に取り上げます。実はオリコンの週間チャートで「喝采」は2位止まり。この「喝采」の1位獲得を阻んだのが「女のみち」だったのだそうです。底抜けに明るい曲なので、献奏のイメージではありませんが、湿っぽい雰囲気を嫌う故人にはぴったりの曲かもしれません。しかし献奏においては、明るく演奏すると言っても、あまりにあっけらかんとするのは考えもので、「さじ加減」が必要とされます。このような歌謡グループ系の曲としては、他に「なみだの操(殿様キングス)」「宗右衛門町ブルース(平和勝次とダークホース)」なども、ご要望を頂戴する事があります。
(1972年/昭和47年/宮史郎:詞/並木ひろし:曲)

この年代、歌謡曲には非常に多くのヒット曲があり、献奏に合いそうな曲も非常に多い中で、たった5曲だけしか紹介しないのも、些か心残りではあります。私自身が上記以外に推したい楽曲も数多くあるのですが、ここは、あくまでもご遺族様からのご要望の高い曲と言う事でピックアップ致しました。

さて、年代別の献奏曲ピックアップはこれにて一区切りと致します。次回の更新からはジャンル別に演奏頻度の高い献奏曲をピックアップしたいと思います。

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