セレモニーピアニストの日々

片山健太郎

ウイスキー 食と嗜好品

なぜシングルモルトウイスキーがありがたがられるのか? ~ニッカセッションを飲みながら考えてみた

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ニッカセッションに180mlのミニボトルが新たにラインナップされたので、1本買って飲んでみました。

ちなみに、こちらの銘柄を頂くのは初めてです。2020年9月に発売された時、買うかどうか迷って結局買わずにここまで来てしまい、今回のミニボトル発売を機に、ようやく買う決断をしたのです。

ニッカセッションは、いわゆる「シングルモルトウイスキー」ではなく、「ブレンデッドモルトウイスキー」と呼ばれるもので、原材料はシングルモルトと同じ大麦麦芽のみ。ただし、余市蒸溜所宮城峡蒸溜所のほかに、海外のモルト原酒(「ベン・ネヴィス蒸溜所」やその他のスコッチモルトの原酒)を含んだ、複数蒸留所ブレンドとなっております。

ストレート、ロック、ハイボールと試してみました。ストレートでは香りにレーズンを最初に感じ、次にナッツや杏、はちみつなど。味わいはクリーミーな甘みの奥にほんのりスモーキー感、余韻にスパイシーさ、ビターチョコのようなほろ苦さを感じる、と言ったところでしょうか?ロックにすると前述のビターチョコ感が前面に出てきます。ハイボールでも味の骨格は変わりません。酒齢の若い原酒も使っているんでしょうが、アルコールの棘は感じず、非常によくまとまったブレンドと感じました。価格は700mlフルボトルで3,000円台。同価格帯のシングルモルトウイスキーと比べても味わいに遜色はなく、常飲にも適したウイスキーと思います。

さて、ここからが本題です。私自身、ニッカセッションは今回のミニボトルでようやく購入に至り、フルボトルではまだ購入していません。発売開始直後は品薄状態でしたがすぐに解消され、現在では、どこの酒販店、スーパーにも大量に陳列されています。売れていないわけではないのでしょうが、飛ぶように売れている、と言う感じは見受けられません。同時期に発売されたサントリー碧にも同じ傾向が見られます。こちらを私はまだ飲んでいません。私のような食わず嫌いのウイスキー愛好家も、きっと多い事でしょう。

1,000円台、2,000円台のウイスキーなら気軽に買えるとしても、3,000円台となると、買うのに迷いの出る方は大勢いるんじゃないかと思います。3,000円台になると、スコッチウイスキーのシングルモルトタイプも視野に入ります。私自身、並み居る3,000円台のウイスキーの中で、あえてニッカセッションを選ぶ、と言う風にならないのは、味わいの問題と言うより、やはりニッカセッションの持つブランドイメージの問題と思います。

ここからは私の独り言です・・・あ、ここまでも私の独り言ですが(笑

先に結論から申し上げます。

このウイスキー、「竹鶴」のブランド名で売っても良かったんじゃないか?

と言う事です。ニッカのクソまじめな良心が、スコッチモルト原酒の使われたこのウイスキーに、「竹鶴」と名付けるのを躊躇されたのだと思いますが、細けえ事はいいんだよっ!たとえ海外原酒を使う事で、「竹鶴」がジャパニーズウイスキーの定義から外れようとも、やはりこのウイスキーにはニッカウヰスキーの長年の精神がちゃんと息づいています。「竹鶴」がだめなら、サブネーム付きでも良い。

例えば・・・

「竹鶴World」

「竹鶴セレクト」

もしくはアルファベットで

「TAKETSURU」

いっそのこと、ワールドブレンデッドの新提案

「リタ」

とか、やはり、竹鶴さんにちなんだネーミングが良いと思いますね、私は。

何故私がそう考えるのかと言うと、これが今回のタイトル「なぜシングルモルトウイスキーがありがたがられるのか?」につながるのです。

シングルモルトウイスキーを好むウイスキー愛好家にとっても、ブレンデッドモルトウイスキーは地味な存在です。原料は同じモルト原酒のみ。シングルモルトと言っても、一つの蒸留所内のいろんな樽の原酒を混ぜ混ぜして作るのです。加えて、蒸留所の管理する熟成庫は一か所とは限らず、複数個所に散らばっていることも多いし、熟成を他の蒸留所の熟成庫を間借りして、なんてこともあります。何のことはない、シングルモルトとブレンデッドモルトの境界線なんて、非常に曖昧です。

じゃあ、この差は何?

それは、単純に「ブランド」の差と考えます。

じゃあ「ブランド」とは何か?

ウイスキーにおいての「ブランド」とは、端的に申し上げ、そのウイスキーが生まれる過程を描いた「ストーリー」が多くの割合を占めると思います。

例えばマッカラン、例えばグレンリベット、どこの蒸留所でもそうですが、必ず創立の歴史があり、そこから何人もの先人たちが、現在の味わいを作り出すに至るまでに考え出された苦労話があります。また蒸留所の立地も重要で、例えば「ラフロイグ10年」を飲みながら、勝手にアイラ島の厳しい自然と海の香りを思い描いたりします。私たちはウイスキーを飲みながら、人と土地の織り成す「ストーリー」も同時に味わうのです。要するに「ウンチク」と言うやつです。これは何も歴史ある蒸留所に限った話ではなく、新興蒸留所にだってストーリーはあります。例えば秩父蒸留所における肥土伊知郎さんの様々な苦労話であるとか、ガイアフロー静岡蒸留所のポッドスチルが閉鎖された「軽井沢蒸留所」のものを使っているとか、そういったひとつひとつのストーリーを、そこで生み出されたシングルモルトウイスキーと一緒に私たちは「味わって」いるのです。

そしてそれは、ウイスキーそのものの味わいよりも、むしろ重要なファクターだと私は考えています。私は未だ「秩父」も「静岡」も飲んだことはありませんが、こうしたブランドストーリーに触れれば、もうそのウイスキーの半分くらいは「味わったも同然」だと思っています。なぜなら、ウイスキーに限らず、ものの味わいは、多分に先入観によって支配されていると言っても過言ではないからです。

同じような味わいであっても「ブレンデッドモルト」の存在が地味であるのは、この「ストーリー」の部分が致命的に欠けているから。ですから、本気でブレンデッドモルトウイスキーを売ろうと思ったら、この誕生に至るまでのストーリーを無理くりにでも作り出さないと、同価格帯のシングルモルトウイスキーにはかないっこありません。

同じニッカのブレデッドモルトでも「竹鶴ピュアモルト」にはストーリーがあります。「竹鶴ピュアモルト」と言うブレンデッドモルトそのもののストーリーは希薄ですが、「竹鶴」と言うネーミングには、あのジャパニーズウイスキーの先駆者、竹鶴正孝さんの圧倒的なストーリーが見え隠れします。残念ながらニッカセッションには、このストーリーに全く魅力がありません。「ああ、余市と宮城峡が原酒不足なのね」とか、「なぜにベン・ネヴィス?(ニッカ傘下の蒸留所だから)」とか、そういうご都合主義的なイメージが先立ってしまう。せっかくの素晴らしい味わいなのに、これは本当にもったいないと思います。せめてボトルの形くらい、「スーパーニッカ」や「フロム・ザ・バレル」のようなストーリーを持たせられれば、もう少し購買意欲を掻き立てられたかもしれなにのに!

とはいえ、かつて3,000円台で購入できたシングルモルトウイスキーも、昨今はそうもいかなくなっています。3,000円台お手頃シングルモルトの代表格だったグレンフィディック12年も、今や5,000円に迫る勢い。ニッカセッションは、そうしたシングルモルトウイスキーに代わって、積極的に選びたいウイスキーの一本です。これとて、今後3,000円台を維持できるかは先行き不透明ではありますが、ぜひ今のうちに買ってストックしておきたいボトルのひとつだと思います。

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